ワタシが最初に洋楽といわれるジャンルの音楽を聴いたのが'70中期、
小学校4年生ぐらいの時でありました。
そのころすでにビートルズはなく、ジミヘン、ジャニス、ジム・モリソンもこの世になく、
今でさえ'70ブームなんて言ってるけど当時のミュージック・シーンは、
けっこうシラケきっていたような気がします。
'60〜'70初期の熱気はどこへ、ってな感じでROCKといわれるものは
次代のピストルズの登場を待つまでの準備期間、
つまり停滞していたミュージック・シーンへの欲求不満が爆発する
温床期だったといえると思います。
そんな中、ヒットチャートを賑わしていたのがこのカーペンターズ。
その後パンクスの影響を受け、
ひたすらROCKにのめり込んでいくワタシでありますが
根底にあるモノはこのカーペンターズの甘いポップ・ソングなのです。
当時はまだサッカーはやってなくて釣りに熱中していて、
日曜日は毎週のようにオヤジにせがんで
どこかしらで釣り糸を垂らしておりました。
しかしたいていは近場の浦安あたり。
当時は今ほど荒川は綺麗ではなく、近くで魚が釣れるところといったら浦安ぐらいのもので、
その浦安もまだネズミーランドが出来るずっと前。
埋め立てしたばかりって感じで工場が林立する、「青べか物語」とはほど遠い
きったない海でありました。
そこで日曜日、朝も早くから釣りをするわけでありますが、
いかんせんガキで、釣れないとすぐに飽きてしまってブラブラはじまってしまう。
だいたい6:00頃から始めて8:00にはもう飽きちゃう。
それであっちこっち探検が始まるのでありますが、
ある日を境にその時間は車の中でラジオを聴くようになるのです。
当時はほとんどなかった洋楽のヒットチャート番組、
かの糸井五郎の「ポップス・ベストテン」です。
もうとにかく魚が釣れよーが釣れなかろーが、
8:00ったら必ず車の中で食い入るように聴いていました。
だって当時週に一回のこの番組だけがその頃の情報源だったのですから。
ガキだったのでFMなんて知らなかったし、後に知っても当時はNHKと東京FMの
2局しかなくてそこで洋楽かかっている番組なんてほとんどなかったのです。
(NHK・AMの「若いこだま」、FMの「ヤング・ジョッキー」を知るのはずっと後)
魚釣りに飽きてもこれだけは絶対に飽きませんでした。
当時はカセット・テープなんて持っていませんでしたから、
リアルタイムで聴かなければそれっきり。
それに次にいつその曲が掛かるかなんてわからないわけですから、
ヒット・チャートの順位が物凄く重要になってくる。
それで余計熱中して聴いてハマっていってしまうのです。
そこで必ず上位に食い込んでいたのがこのカーペンターズ。
日本の歌謡曲にはないキャッチーなメロディ、アレンジ、
そしてあの甘いカレンの声。
歌詞なんて解らなくても思春期に入ろうとしていた少年を熱中させるだけの
「何か」があったんだよね。
たぶんそれは女性を「異性」として見る目が出てきた頃、
ラブ・ソングをラブ・ソングとして聴けるようになった
最初の経験でありましょう。
その曲自体のパフォーマンスだけでなく、聴いた時の年令や状態。
これらってかなり大きな問題だと思います。
それも自分で選択できるのではなく、偶然の「出会い」でしかわからない。
人間関係と同じですね。
当時オヤジは鮮やかなメタリック・グリーンのワーゲンに乗っていて
そのシートに寝っ転がって晴れあがった空を見ながら、
わくわくしてカーラジオから流れるカーペンターズを聴いていました。
この曲を聞くとあの時の浦安の、真っ青な夏の空を思い出します。
http:// www.youtube.com/ watch?v=t0oroGJusBg