[POPS] [平井]

ライブ・レヴュー

エルビス・コステロ/99.2.8(MON)中野サンプラザ

こばやち ((再録)) 1999/08/17
平井の人間のもっとも不得意とする洋楽、ロックである。
いや、平井はロックだけでなく、カルチャー一般に対して弱い。
先日もある席で 
「こやちはカルチャー一般に対してマニアックだ。」
などという発言があったが、
オレは普通に読書して、音楽を聴いて、芝居を観て、美術を楽しんでいるだけで、
けっしてマニアと言われるほどのモノではない。
もし彼等が一般でオレがマニアックであると言うなら、
もはやカルチャーや、エンターティメントの主流はTV一つでしかなく、
本も音楽も芝居もサブ・カルチャーでしかない存在になってしまったのであろう。
今や読書を愛し、音楽を楽しむ人間は一般的ではないのである。
そしてその本も音楽もこの情報化社会で細分化されてしまって、
どれをとってもマニアックに成らざるをえない状況で、
いわゆるベストセラーがすべてタレント本(浅田次郎は例外だね。)であり、
ヒット曲はすべてCM、ドラマ絡みというのもすべて主流はTVである象徴である。

そんな中でLIVEというのは世間にとってどんな位置付がされているのであろう。
アーティストと同じ空間を共有し、その緊張感の中で芸を楽しむスリル。
客が一体となって笑い、泣き、感動するカタルシス。
今やそういったモノは希少価値になってしまったようだ。
ただ単に各自がかってに騒ぎたいだけ。
そこにはアーティストに対する敬意も、観客の一体感も、感動もなく、
ただ盛り上がって騒ぐだけで、ドラッグやってハイになってるのと変わらない。
昔のプロ野球の、
「9回裏2死満塁ツースリー、満員の場内は水を打ったように静かになり、
 プレーヤーの一挙一動を食い入るように注目する・・・。」
なんてことはもう見られないのであろう。

さてやっとここでコステロ登場。
ここにはかつての本当のLIVEの楽しさがあった。

ニューアルバムがあまりに地味すぎて今回はパスしようかな、なんて思っていたのだが、
ピアノにスティーヴ・ナイーヴが来るんじゃ行かない訳いかない。
で不安ながら行ったんだけど、CDとライブじゃ全然違うんだよね。
当たり前だが生で聴くほうが断然いい。
そしてこれが重要なんだが、客がいい。
ほんとに好きで来ている連中ばかりで、冷やかしの客がいない。
最近のメジャーなLIVEは、アーティストが出てきただけで総立ちになってしまい、
ろくに曲なんて聴いていなくて、そっから最後まで大騒ぎになるのが定例で、
彼等はそれが目的で来ているとしか思えない。
この日の客はそんなことなく、じっくりと聴いていて、最後のあたりになると義務にではなく、
思わず自然と立ちあがってしまいスタンディング・オベイションに。
ピアノとギターだけで自然にそうなってしまう。
アンコールも演出上のモノでなく、客の要請に答えての予定にないプレイ。
しかもマイクを使わず客席に降りてきての熱唱。
しかしそれで客に揉みくちゃにされるわけでもなく、
みんなあくまで演奏者を尊重し、最後は全員で大合唱。
終わって客電が付いても鳴り止まない拍手。
帰りの道中も、「サイコーだったぜ!」ってな感じではなく、
ため息まじりにポツリと 「良かったねェ。」 なんて声が聞こえてくる。

今やこういったLIVEはマニアックになってしまったのかもしれないが、
寝転がってTV観てるより数段面白いし、何より他にはない感動があるゼ。