[POPS] [平井]

ライブ・レヴュー

ザ・ベンチャーズ/99.9.11(SAT)市川市文化会館

こばやち 1999/09/13
40周年らしい。
40年だぜ、40年。
それだけでも観に行く価値アリだ。
(でも薗田さんより年下らしい・・・・。)
会場に入るとどっかの落語会に来てしまったのではないかと錯覚するほどの客層。
けっこう若い連中や親子で来ていたやつもいたみたいだが、
どーもジジババが目立つのだ。しかもごく普通のジジババが。
他の客もロックや洋楽には無縁な感じの人ばかり。
しかしそれで市川文化会館大ホールの1階席が9割5分は埋まってる。
恐るべしベンチャーズ。

ここ何年か、マニアックな音楽雑誌でベンチャーズ再評価の動きが出てきて、
コアな音楽ファンにも受け入れられている。
(去年はクラブ・チッタでやったらしい。)
ワタシもその尻馬に乗ったのであるが、なにも知らず飛びついた訳でなく、
当然代表曲のほとんどは知っているのだ。
中学時代彦ちゃんとカツの3人で誕生日にみんなで金出し合ってレコードを買う
ってことをやっていて、カツに彦ちゃんとベンチャーズのLIVE盤を買ったのだ。
(自分は新譜しか買わないで人に贈るのは自分の聴きたい昔のレコード買うあたり・・・・。)
当然テープにダビングして聴いていたので代表曲はだいたい解る。
「京都慕情」なんてカラオケで唄える。それに新曲って出してんの?
ってな感じで半分舐めたスタンスで行ったのだけど、良かったんだコレが。

まずたくさんの代表曲があるからなのか、1曲1曲が短い。
曲のエンディングも引っ張らないで潔く終わる。
これが新鮮でテンポよく、あのベンチャーズ・サウンドが次々に演奏されて
非常に心地よかった。
その「ベンチャーズ・サウンド」、
ストーンズの「ペイント・イット・ブラック」のカバーを演ったのだが、
見事にベンチャーズなんだこれが。
ロックだとかジャズではなくて「ベンチャーズ」、もはや古典芸能なのである。
舐めた意味でなく落語に近いモノがある。
誰も彼等に新しいものなど期待していないし、彼等も今更やる気などないであろう。
それでいいのだ。
そしてもう1曲のカバー、アニマルズの「朝日のあたる家」。
かのエリック・バートンのソウフルなボーカル全開のあの曲である。
これまた「ベンチャーズ・サウンド」なのだが、
この曲の長いギター・ソロはブルースしてました。
往年のロック・ファンはノーキー・エドワーズのギターであるのかもしれないが、
ジェリー・マギーのギターも充分すばらしかった。
なんたって元デラニー&ボニーだぜ。(知らないか。クラプトンの入る前の
ギタリストってとこ。つまりクラプトンは彼の後釜であったのだ。)
笑ったのがそのギター・ソロで客席に降りてきてぐるっと一回りしたのだけど、
客が握手求めるんだよね、ギター弾いてんのに(笑)。
曲が終わった時の拍手も最後まで待ちきれず、曲の途中からしてしまう。
コンサート慣れしてないんだな。

アンコールでなんとドラム・ソロであるのだが、これまた予想外にいい。
そんなにパワフルじゃないのだがテクニシャンである。
ファンにはお約束らしいが始めて見たベースをスティックで叩くやつ。
それまでベースはソロになってもそんなに目新しいテクニックを見せる訳でなく、
チョッパーのひとつでも思っていたところにこのプレイ。
プログラム見るとこれがチョッパーのベースになったのでは、とある。
なるほど、だから演んなかったのね。

エンディングではまたも待ちきれないのか、曲の途中で花束もった連中が
ステージに殺到する。
それも年寄りだけでなく若い連中や子供までもが。
これがハンパじゃない数で全部受け取るのに5分ぐらいかかる。
でもひとりひとり丁重に握手して、なかなかいい感じではあった。
こんなに歓迎されているんだもの。
毎年毎年来るわなぁ。
もはや銭金目当てだけで来てるんじゃないね、これは。

普段あまり洋楽聴かないような連中をここまで夢中にさせるというのはスゴイ。
これはもう立派な「芸」である。
こう言うと音楽ファンはなんだかひとつランクの下がったモノのように
受け取るかもしれないが、これは最大の賛辞である。
来年はTシャツ買うぞ。