平井・落研雑談室

　東海村の現在の状況を報告いたします。

　ウランと大量の放射性物質が溜まった沈殿タンクは、今もあの日注がれたウラン
１６キロと発生した放射性物質で満たされているはずです。そして、そのタンクは、
動かすことも壊すことも埋めることもできません。
　タンクのそばに置いたものはなんでも放射性物質という、ほぼ永遠になくならな
い最悪のゴミとなってしまうからです。
　放射線の中でもＤＮＡを破壊するもっとも危険な中性子を吸収するのは、ボロン
（ホウ素）です。
　これをタンクの周囲に張りつけることで、中性子の流出を防ぐことができます。
　しかし周囲に張りつけるにも、タンクに近寄ることができないのです。
　以前、原発事故で使われたのは、ごはんにボロンの粉末をまぜておにぎりを作り、
それをタンクにぶちあてるという方法でした。
　そして今回もきっとタンクのそばまで行ってボロン団子を投げるための、被曝覚
悟の部隊が編成されるに違いありません。
　誰が選ばれるのか、どの人たちが選ばれるのかと思うと、怒りと哀れでなりません
。　今度の『二代目はクリスチャン』は東海村を舞台といたしました。
　臨界事故の時、作業員たちが見た青白い光はチェレンコフ光と呼ばれております。
　チェレンコフ光は電気を帯びた粒子が水やガラスなどの透明な物質の中を高速で
走る時に出る光です。
　天文学界では、一つの星が死ぬ時に放出されたニュートリノが地球に届き、数万
トンもの水の中で発するその光は、星が死ぬ時の最後のきらめきの光として、宇宙
のロマンの象徴とされております。
　しかし原子力業界では原子炉が停止している時、井戸の底で青白くボーッと輝く
不気味で恐ろしい光と認識されているようです。
　このチェレンコフ光が、今回の事故では作業員の目の水晶体で起きたといい
ます。
　その光を観測するのに何万トンもの水を必要とするというのに、こんな小さなガ
ラス玉で光をみたとは、いったいどれ程の放射線が出されたのでしょう。
　いまも私のいるホテルからは、その工場は悪魔の住処のように思えます。